文明が衰亡するとき

去年に読んだんですが感想をお蔵だし。これまたフォロワーの方にお勧めいただいた本。文明の衰亡を避けられないものと捉え、そのケーススタディとして古代ローマとヴェネツィアを、その現在進行中の応用例として現代アメリカ*1を論じている。日本についても…

将棋の駒はなぜ40枚か

伝統遊戯のルールの揺らぎについて、例えば将棋会館なんかの果たした役割ってどんなもんかな?とか言ってたところtwitterでフォロワーの方に教えていただいたのがこの本。 タイトルの「なぜ40枚か」部分は早々に明かされ、どちらかというと、将棋という文化…

機械との競争

機械が人間の雇用を奪っている。そんな19世紀からあった話は、これまでの歴史で繰り返し否定されてきた。 科学技術の進歩は新たな雇用を生み出し、結果的により多くの人間を豊かにしている、と。 だがしかし、そんな時代はもう過ぎ去った。コンピューターの…

コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと

その傘下に出版の角川、富士見書房、メディアワークス、メディアファクトリー、アスキー、エンターブレインに、ゲームのスパイクチュンソフト、5bp.、角川ゲームス、フロムソフトウェア、そしてもちろんドワンゴと、いまや日本を代表するメディアコングロマ…

河合隼雄全対話7 物語と子どもの心

さいきん河合隼雄づいてるので。 元高校教師で、日本にユング心理学をもたらし箱庭療法を広めた心理学者にして、文化庁長官も務めたという異色すぎる経歴の河合隼雄(故人)の根っこは「いかにして子どもの心を理解するか」にあったようだ。本書のあとがきで…

ソラリスの陽のもとに

『ディアスポラ』のじゅうたん生物のことを考えていたら無性に読みたくなったので20年位ぶりに再読。映画版ともあいまって断片的な記憶しかなく、大雑把に言って「宇宙ステーションでひたすら妻の亡霊にさいなまされる話」くらいに思っていたら、再読して、…

ディアスポラ

ひさびさのグレッグ・イーガン。これまでの奇天烈きわまるイーガン作品と違い、今回は未来で宇宙で人類の進化で世界の危機でファーストコンタクトで、というある意味ジャンルSFの王道というかパロディ的なモチーフを扱っている。そしてタイトルが『ディアス…

スペース・マシン

初クリストファー・プリースト。手に取った理由はそのタイトルと、どう見ても火星のトライポッドにしか見えない表紙絵のせいだが、というあたりで想像されるとおり、本作はH.G.ウェルズの『タイム・マシン』と『宇宙戦争』のテクニカルな融合作品となってい…

生物から見た世界

で、上記日高氏の本のネタ本でもある本書。ゲーム人工知能で有名なmiyayou氏からもオススメがあり、確かに当時としては斬新な考え方で、たぶん、「カント哲学の自然科学(動物行動学)への応用」という文脈からも様々なジャンルに影響を与えた考え方だと思わ…

動物と人間の世界認識 イリュージョンなしに世界は見えない

本邦の動物行動学の第一人者であった日高敏隆氏が、「動物にはこの世界がどう認識されているか」というおよそ答えが出ないと思われる難しいテーマを平易で丁寧な文章と豊富な実例で読者に紹介する入門エッセイ。 本書を手にしたのはたしか、ドラゴンなどの架…

戦争の映画史 恐怖と快楽のフィルム学

二冊目。こちらは仏文学者、映画評論家の大学教授の書いた本。上記の本と違い、当事者の書いたものではないので、こちらは「かくあるべし」といった主義主張は希薄。 映画評論家の筆だけあってこちらは作品論がメインで、意外と個別の「戦争」そのものとの関…

メディアは戦争にどうかかわってきたか 日露戦争から対テロ戦争まで

よく似たタイトルの本を2冊。 一冊目のコレは、朝日新聞のいわゆる「防衛庁番」の書いた、戦争に際して各国のメディアがどう関わってきたかを時代ごとに区切って描いた本。 日露戦争時の軍部の外国メディア対応のマズさがその後の不利な講和を招いた、とい…

メイキング・オブ・カウボーイビバップ レックレス・プレイヤーズ

往年のアニメ『カウボーイビバップ』のメイキング本。 本編の脚本にも参加している佐藤・「キャシャーン」・大*1がインタビュアーとなり、各スタッフに話を聞く、という構成が面白い。 特に興味深かったのは、シリーズ構成の信本敬子との対話。 各話参加の脚…

思想地図β2

いただきものを読了。譲っていただいたYさん、ありがとーございます。 でさっそくですが、けっこう残念な本だった。 震災後の希望を描く!みたいな大上段なテーマなのだが、とにかく編集長、東浩紀の慌てぶりばかりが目に付き、少なくとも自分が期待してい…

パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の戦い

また伝記。 自分は『明治新聞王奇譚』(http://hw001.wh.qit.ne.jp/tzk00/)の企画を練っていた頃に堺利彦を知った。「萬朝報」看板記者の一人で、小説家、翻訳家、エッセイストとして優れた才能を持っていた堺は、「萬朝報」社長・黒岩涙香の興した「理想団」…

殉死

司馬遼太郎『坂の上の雲』を原作としたNHKドラマを観た。 非常に見応えのあるドラマだったが、これを観て、いくつかの疑問が湧いた。大きいのは以下の二つ。 これほど合理的な戦争*1ができていた日本政府が、なぜ太平洋戦争という、必敗の戦争を最後まで遂行…

ルポ 貧困大国アメリカ/II

基本的に同じテーマで、重複するところも多いので2冊まとめて。 いやー、実にうんざりさせる本だと思う。 日本、特に「改革」を掲げてアメリカ同様の「小さな政府」を推進し新自由主義に突き進んだ竹中平蔵と小泉内閣、その目指した理想がかくもグロテスク…

ラーメンと愛国

世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」から最近流行りの「作務衣系ラーメン屋」までを縦軸に、戦後日本の価値観の変遷を明らかにしようとする、例によってタイトルからちょっと想像しえない大胆な研究本。中国由来の「中華そば」*1が、アメリカの…

銃・病原菌・鉄

これはすごい。目から鱗の連続。 生物学者の著者が、ニューギニアの政治家の発した疑問「なぜ欧米人は様々なものをニューギニアに持ち込んだのに、我々が欧米に出せるものがないのか?」から、「世界の富の不均衡」の答えを求め、生物学、遺伝学、疫学、言語…

諜報・工作 ラインハルト・ゲーレン回顧録

横浜図書館のネットワーク万々歳。というわけで読了。 ナチスドイツ時代、陸軍参謀本部で対ソ連情報収集を行っていた東方外国軍課長にして、戦後西ドイツの諜報組織ゲーレン機関のちのBNDの初代長官となったラインハルト・ゲーレンの回顧録、という触れ込み…

ケータイ小説的。 "再ヤンキー化"時代の少女たち

ケータイ小説にはてんで興味はないが、同著者の『タイアップの歌謡史』『自分探しが止まらない』はいろんな人にムリヤリ読ませたりしてるので、その延長線上で。 で、いきなりだがこの本、「ケータイ小説」についての本ではない。もっと売れそうなズバリのタ…

テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ

twitterで竹熊氏が「『進撃の巨人』のブームは「キャラ」からの揺り戻しが始まっている証ではないか」的なことを言ってたところから。 いわゆるガンガン系の雑誌を例に、現在のマンガが「キャラクター」ですらなく、「キャラ」で構成されている、としてその…

顔のない男―東ドイツ最強スパイの栄光と挫折

「顔のない男」として怖れられた東ドイツの対外諜報機関HVA長官マルクス・ヴォルフを軸に、冷戦時代の東ドイツの諜報活動と、冷戦後の価値変遷を描く本。 企画の参考用に読んだ。企画はポシャりそうだが、内容は面白かった。有名なギュンター・ギヨーム事件…

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ

<サーカス>*1の2重スパイ疑惑に、引退した老スパイ、ジョージ・スマイリーが<もぐら>探しに狩り出され……というお話。いや〜、ビックリするほどアクションのない話で驚いた。基本的にスマイリーが過去の帳簿をひたすら調べるだけの話、ともいえる。 しか…

叛旗兵

忍法帖も一段落し、山風が明治モノを手がけ始めた頃の作品。 というわけで、かどうかは知らないが、明治モノ同様の短編連作形式になっており、けっこうなぶ厚さの割に、短編風ブツ切りエピソードが続くあっさり目の展開。 直江兼続に仕える、前田慶次郎など…

仮面ライダー 1971-1973

同僚に借りまして。 1971年当時を舞台に、本郷猛が「仮面ライダー」になる過程をリアルタッチで描く…というコンセプト。ちょっと平成アニメ版『鉄人28号』にも似てる。 なかなか面白かったが、面白さのほとんどはやっぱり原作への目配せが上手くいっている部…

機動戦士ガンダムUC 10巻(最終巻)

うーん、読んでる間は先が気になったし、正直とても楽しませてもらったが、これってこんな長い話である必要あったのかなぁ? 結果的にほとんど使われなかった、もしくは元の鞘に戻っただけのピースが多すぎない? 『Op.ローズダスト』から続いているはずの、…

機動戦士ガンダムUC 6〜9巻

なるほど、この話ってオードリーがまったくヒロインとしてなってねーなー、と思ったが、それも計算で、ヒーローはヒーローとして、ヒロインはヒロインとして、それぞれ成長していく話、なんね。リディ、マリーダはそれぞれバナージ、オードリーの写し鏡、「…

機動戦士ガンダムUC 4〜5巻

やっぱこれ、トミノ的集団劇じゃなくて、もっとクラシカルな貴種流離譚だと思ったほうが良さそうだなぁ。 世界の命運を担う「神」に仕える一族、その真の後継者が辺境から王座奪還を目指す物語。王の帰還か。 そしてヒロインは亡国の姫君。ライバルは革命家…

機動戦士ガンダムUC 2〜3巻

はいはいボーイミーツガールボーイミーツガール。 いまどきオヤジの理想を託される主人公ですよ。富野っつーより今川路線だなぁ。つーかユニコーン起動シーンってOVAジャイアントロボの5巻、草間博士がロボの操縦者を大作に設定するシーンとあまりにもかぶっ…