アライブフーン

ドライブゲームのチャンピオンが実際のドリフト競技に駆り出されて大活躍!という、やや実話風味のスポ根ドライブアクション映画。現代に蘇ったリアル『スターファイター*1ともいえる。
下山天監督は主にMV方面で活躍している人だそうで、その意味では中野裕之監督*2や、リドリー・スコット監督に近い作風といえるかもしれない。
本作『アライブフーン』においてもその手腕は遺憾なく発揮されており、頭文字Dの藤原拓海ばりに喋らない主人公の心情は、印象的なスローで切り取られる鋭い目線、暴力的なエキゾーストノート、そして劇伴によって雄弁に語られる。語られる内容自体は複雑ではないし、ストーリーも良くも悪くもベタベタの少年マンガなのだが、そのシンプルなストーリーだからこそ、日本映画らしからぬこの「徹底的にアクションと画で語る」作品となり得たのだと思う。
この作品の真の主役とも言えるカーアクションについても、本作では「CGナシの本物のドリフト」にこだわっており、「正直どうやってもハリウッド作品には勝てないCG」ではなく、「すでに世界トップレベルである本物のドリフト」をひたすら映し出すことで、アニメ以外の邦画では*3なかなか難しい「テンションの高い画面を維持」することに成功しており、日本発アクション映画の新たなスタンダードを示した作品ではないかと思う。もしかすると、『ウォーターボーイズ』のように、今後繰り返し繰り返し使われるフォーマットとなるかもしれない*4
惜しむらくは、せっかく「ゲームから現実へ」という『レディ・プレイヤー・ワン』とも戦えるテーマを持ちながら、日本のレースシーンと邦画の限界からか、「ゲームでは世界に羽ばたくけど現実は日本チャンピオン止まり」という微妙な地点をゴールとせざるを得なかった点で、本作がヒットしてハリウッドリメイクでもされたらあっけなく覆ってしまうであろうこのエンディングに、衰退国家日本の現実を突きつけられた気分になった。本作に惚れ込んだどこかの外国資本が、オリジナルと同じスタッフ、キャストでの続編制作に乗り出すことを期待したい。

*1:もしくはゲームの『イメージファイト

*2:なんか似たような帽子被ってるし

*3:おもに予算の関係で

*4:そのせいか、ウォーターボーイズフォーマットの『ガールズ&パンツァー』の映画にもよく似ている