顔のない男―東ドイツ最強スパイの栄光と挫折

「顔のない男」として怖れられた東ドイツの対外諜報機関HVA長官マルクス・ヴォルフを軸に、冷戦時代の東ドイツの諜報活動と、冷戦後の価値変遷を描く本。
企画の参考用に読んだ。企画はポシャりそうだが、内容は面白かった。有名なギュンター・ギヨーム事件も、どちらかというと「成功しすぎてかえって大事になってしまった」ということらしく、史上もっとも成功したスパイにして、このへんのままならなさがリアル。KGB組織力ナチスSSの徹底ぶりを兼ね備えたシュタージ/HVAの諜報組織としての優秀さも、その実、社会主義国では発展が望めない科学技術を西側から略取するための産業スパイ活動にその能力の多くが費やされたとか、なるほど、国際謀略の現場は、いろいろと「普通の会社」と大同小異な問題と葛藤しているのだな、と勉強になった。
次はナチス幹部から西ドイツBNDの前身となった「ゲーレン機関」を創設し、HVAと対立したラインハルト・ゲーレンの自伝を借りてきた。東ドイツ史の年表片手に読破予定。
Rockstarの『AGENT』に対抗する企画を募集してるディベロッパのみなさん、ぜひお声がけを(笑)