生物から見た世界

で、上記日高氏の本のネタ本でもある本書。ゲーム人工知能で有名なmiyayou氏からもオススメがあり、確かに当時としては斬新な考え方で、たぶん、「カント哲学の自然科学(動物行動学)への応用」という文脈からも様々なジャンルに影響を与えた考え方だと思われる反面、(結果オーライだったとはいえ)当時としては一部の状況証拠に頼ったやや危なっかしい理論だったのではないか、という印象を受けた。さすがに戦前に書かれた本なので、普通にエーテル理論なども出てくるし、当時のドイツ(第一次大戦の敗戦国)が科学と哲学(カントもドイツ人だ)で世界に逆襲しようとしていた空気がそこここに感じられもする。そういった歴史が垣間見えるあたりが、現代日本で書かれた日高氏の本にはない本書の魅力の一つで、自分なんかはそのあたりが一番面白かったかも。
もちろん動物行動学の入門書としても素晴らしく、少年の頃の日高氏を興奮させたという本書の考え方は現代においても魅力的なので、「動物」の本だと思わず「認識」についての本だと思ってぜひ。