機動戦士ガンダムUC 4〜5巻

やっぱこれ、トミノ的集団劇じゃなくて、もっとクラシカルな貴種流離譚だと思ったほうが良さそうだなぁ。
世界の命運を担う「神」に仕える一族、その真の後継者が辺境から王座奪還を目指す物語。王の帰還か。
そしてヒロインは亡国の姫君。ライバルは革命家の遺児でもある、これまた亡国の王子。
うーん、この位置づけだと、フル・フロンタルはシャアであるかどうかとかまったく関係なく、単なる噛ませ犬で終わってしまいそうだ。下手すると「こうなってはダメな例」として、Gロボにおける幻夜的な扱いに。
で、4〜5巻。
このへん、ガノタ的にはマリーダの正体が目玉だろうか。いままでの福井小説だとマリーダこそがヒロインのポジションなので、これといって特徴のない正ヒロインのオードリー(仮名)の影が薄くなりまくり。セイラにもなり切れてない。
そんでもってダグザ、ガエル、ジンネマンが福井小説定番のオヤジポジションを争奪しまくり。中でもジンネマンの仙石化がエライことに。ちょっと絹見艦長はいってる。
マリーダの他にも、アルベルトの正体、リディの確執など、どっちかというと因縁話がエピソードの多くを占めるようになり、バナージが行動してストーリーが進む、という冒険小説らしい構造が崩れてきた。そのせいか、話の進みが遅くなった印象。
6巻からは地上編らしい。オードリー(仮名)はストーリーを動かせるのか、そろそろ単なるマクガフィンを脱するらしい「箱」の正体はガンダムシリーズとの整合性をどう取るのか、そしてもちろん、トミノすら見失った「ニュータイプ」論*1をどう軟着陸(または強制着陸)させるのか。『Op.ローズダスト』から連なるハズの、福井晴敏の勝算はどの程度説得力を持つのか、興味深くお手並を拝見したい。

*1:現在までのところ、感情的な部分以外は否定的に描かれている