ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

またしてもマーベルのアメコミが原作。…とは言うものの、まったく聞いたことがないタイトルに、まったく見たことがない役者、清清しいほどまったく現代社会と接点のない世界、とまぁ、言ってしまえば「絶対にヒットしないタイプの映画」がなぜか大ヒット! これはある意味、マーベル的「現実離れエンタメ」の現時点での完成形ではないかと思える。
もはや紋切り型であることを隠そうともしない悪役と、はみ出し者であることを嬉々として受け入れている登場人物による「でこぼこチームビルドもの」(スポーツ映画やスポーツマンガの定番でもある)として楽しいが、そのキャラクターやベタ過ぎる物語自体がウケたワケではないのだろう。
本作の勝因は脚本よりも演出、もっと言えば、原作コミックとは関係ない「音楽」の力で、このまったくリアルじゃない作品を無理やりに観客が生理的に「知ってるもの」として受け入れざるを得ない形にしたことにあるのだと思う。こちらもある意味ベタに過ぎる往年のヒットナンバーのつるべ打ちで、CGまみれの異星の風景を週末に訪れた片田舎のピクニックにまで卑俗化することに成功している*1
監督の資質としてはデビッド・O・ラッセルやスパイク・ジョーンズなんかと同じ、アメリカ的「ハズシ」演出の人だと思うのだが、こと歌の選曲に関しては、作品テーマに関わるからか変化球を封印し、普通に歌詞がナレーション代わりになるという古風なスタイルとなっている。というわけでこの作品、萌え萌えなアライグマや木人といった客寄せパンダも完備した、非常にシステマチックで、確信犯的にクラシックな映画なんだと思う。「新しい皮袋に古い酒」をクレバーにやるとこうなる、という好例というか。
楽しい映画だったけど、自分の好みがどこにあってどこにないか*2を再確認させてくれる映画でもあった。その証拠に、もう内容のほとんどを覚えてない。

*1:最近読んだ『いさましいちびのトースター』の一節に「森の中を文明化したければCMソングを流すに限る」というのがあるが、CMで使われた有名曲も多い本作はまさにそれ

*2:もう少しSF寄りだったらまったく違った感想になったかも知れない