ミックマック

冴えない主人公がふとしたはずみでサーカスじみたフリークスの集団に拾われ、彼らと一緒に奇想天外な冒険を繰り広げるバットトリップした童話みたいなお話。と書くと、テリー・ギリアムの最近作『Dr.パルナサスの鏡』と同じじゃん!と思ってしまうが、期せずして同年の公開となっただけで、本作との関係はあまりないらしい。
それにしても、ジャン=ピエール・ジュネのフィルモグラフィは目まぐるしい。決して多作ではないはずなのに、ハリウッドの大ヒットシリーズ→フランスに戻って小品を監督したら世界中で大ヒット→ハリウッド資本・フランス人俳優で文芸大作→またフランスに戻って凝ったコメディの本作、と大作と小品の間を絶えず揺れ動いている。セット撮影が多く、ジュネ&キャロ時代の作品を髣髴させる作りこんだビジュアルの本作は、ジュネの先祖がえり的な作品であると同時に、*1集大成的な作品でもあった。あいかわらず迂遠過ぎてバカバカしいいたずらのプロセスで爆笑し、『黄金の七人』や『用心棒』、『三つ数えろ』にあげく自作の『デリカテッセン』まで、随所に登場する映画愛に溢れたオマージュが楽しい、ジュネの円熟味が堪能できる一品。実はもっとも万人にオススメできるジュネ作品かも。

*1:Dr.パルナサスの鏡』がそうだったように