スピード・レーサー

ウォシャウスキー兄弟5本目の作品は、極彩色のドラッグ・ムービーだった。もしくはセガF-ZEROというか。
うーん、わかる、よくわかるんだが、今作るべきはそれじゃあないだろ、という非常に惜しい映画。
同様に、原色ケバケバな映像スタイルとベッタベタな作劇で大ヒットを飛ばした『KILL BILL』や、コミックそのまんまなキャラクターと溢れる原作愛でやはり大ヒットした『スパイダーマン』なんかと、似てるんだけどやっぱ違う。斬新な映像も、オタク汁漲る原作リスペクトも、時代とのマッチングを欠いてしまっては空回りしてしまう。
たぶんこれ、本来のターゲットである子供が観ればけっこう面白いんじゃないかと思うが、子供が観たがる映画じゃないし、もっと致命的なことに、大人が観せたいような映画でもない。
日本のアニメを使って「ファミリーこそ最高だ」というメッセージも、兄弟は「いまだからこそあえてやるべき」と思ったのかもしれないが、これもちょっとヒネリ過ぎ。もっと「古き良きアメリカ」を象徴するよーな原作でないと弱すぎる。ていうか弱すぎた。『カラー・オブ・ハート』(そういえばこれも「色映画」だ)くらいの見た目のわかりやすさが必要だったんではないか、と思う。
それにしてもこの映像はスゴイ。
「リアル」にしようって気が全然ないまま、この情報量と密度感とスピード感を実現した、という点において、ある意味日本のアニメ作家が目指しても到達できなかった「アニメアニメしたアニメの極北」をまざまざと見せつけてくれた。