X-MEN : ファーストジェネレーション

初ブルグ13。1000円デーでもトンカツ屋でビールがもらえるサービスがあってお得。
自分はブライアン・シンガー版の一作目、二作目がけっこう気に入ってて三作目を見てない程度のシリーズファンだが、今回はかなり面白かった。娯楽としてもレベル高いし、内容面でも「ちゃんと60年代・冷戦時のヒーロー」を描こうとして、しかもかなりの部分で成功しており*1、シリーズ最高傑作といって過言ではないと思う。
なんだかんだで今回も、「マグニートー・ビギンズ」ではあるんだけど、この手の「ビギンズ」系ではシリーズの生みの親であるシンガーが脚本・プロデュースのせいか、ちゃんと世界に連続性があるのがよかった。開幕早々、マグニートー少年時代のシーン(初代のイントロ)が再現されてるのは当時いたく感心したシーンだけに、巧いツカミだと思う。 また、監督がプロデューサーにサービスしたのかどうか(?)、役者が若返ったせいか妙にやおいくさいチャールズとエリックの関係は、ビギンズものらしくものすごい尻切れで終わっていて、これも例えば初代ラストの監獄でのチェスしながらの対話シーンなどをもう一回観たくなる構造。これも、本作の作中で二人が頻繁にチェスをしてるのがこの連続性に繋がってる。巧い。
盛り沢山な内容だが、全体に脚本がよくできており、また、時代背景、特にドイツの描写や、登場人物が「ちゃんとその国の言葉で喋る」のが徹底されているのも、リアリティ向上に寄与してる。このへん、シンガーの前作『ワルキューレ』の経験が生かされているように思う*2
あと『キック・アス』は見てないので推測になるが、監督マシュー・ヴォーンのテイストもうまく発揮され、作品の魅力に昇華されていると思う。たとえば60年代(後半)スパイ映画を彷彿とさせるファッションとロケーションと分割スクリーン。女性キャラは肉感があってエロく、感情表現にも説得力があった。これはシンガーには求め得ない資質。
あと、若きチャールズ(プロフェッサーX)がけっこう女ったらしだとか、チャールズ・エリック組のミュータントがみんな学生サークル気分でとても敵と戦う心構えじゃないとか、このへんの青春ドラマ風味も監督の味だと思う。

TVゲームも冷戦時代ブームだが、冷戦時代の時代背景を踏まえたフィクション構築手法という点で、今回のX-MENはかなりいい線行っていると思う。また、人種や性的マイノリティといったリアルな被差別民の影を何重にも塗り込めたミュータント黎明期の迫害と抵抗のリアリズムは、やはりミュータントの黎明を描いたガンダム/ガンダムUCが獲得できなかった部分*3なので、日本のエンタメとの違いを考える手がかりとしても興味深い。かなりいいよ!

*1:映画版『ウォッチメン』が派手にしくじっただけに、真っ向からこれに挑んだのは意外でもあった

*2:あと、やたら出てくる当時の軍服は、ゲイのシンガーが「男を格好良く見せる」軍服を偏愛してる(ゴールデンボーイとかね)のがバレバレで苦笑させられる

*3:例えば『地球へ…』のような同和問題のアナロジーでもない