国民クイズ

バブル時代の週刊モーニングに突如として現れた、日本版『未来世紀ブラジル』を標榜したと思しきカルト漫画、全4巻。
その蛮勇とも思える目標に対して、本作はかなりのところまで肉薄し得たのではないだろうか。
前半2巻はタイトルとなっている「国民クイズ」の内容と、それにまつわる人々の紹介でほぼ終わる。露悪趣味あふれる国営放送のCMは、本作が『未来世紀ブラジル』や『ロボコップ』などのディストピア未来を描いた傑作群に続くものである、との自覚的アピールでもあるのだろう。『翔んで埼玉』のような形での映画化が望まれる。
そして後半2巻、ここでストーリーは突然フルアクセルで走り出す。絵柄からは狂熱的な世界を感じるが、やはり原作者が別に立っているだけあってストーリーには常に底冷えするような怜悧さがあり、このへんもブラジルっぽさを感じる一因なのだろう。
東京が戦争状態になるクライマックスに、しかし国民が求めたのはクーデターではなく国民クイズだった。本作登場の3年前に大友克洋AKIRAで描いた「東京の戦争とクーデター」に対して苦い返歌を投げ返した本作のアクチュアリティは非凡なものだ。現代でこそ読みたい傑作。