レッド・バイオリン

次のゲームの企画参考として、前々から観たかったこれを満を持して鑑賞。
ある悲劇から呪術的アイテムとなったバイオリンとそれを巡る人々のドラマなのだが、一歩間違えるとB級ホラーになりかねない題材を一級のビジュアルとサウンドで格調高さすら感じるレベルまで持っていけたのは、制作者チームの自力の高さを感じさせる。
こういった、主人公がコロコロ替わるオムニバス形式の映画はどうしても1エピソードあたりの尺が短くなるため、またエピソードの出来に凸凹ができてしまうため、どうしても長編ほどのインパクトは持ちづらい。
それを覆す可能性があるのが「エピソードの繋ぎ方の妙」であり、例えば山田風太郎における連作短編形式の諸作品はその効果によって、長編とは異なる独特の魅力を発揮することに成功していた。
残念ながら本作、そこまでには到達していない。
タイトルロールであるバイオリンを全面に押し出した音楽と史劇の風格を備えた撮影、タランティーノ風の編集マジックによって時間・空間を超えた映画体験をさせてくれる演出、この一見ミスマッチな取り合わせが「現代的な時代劇」として巧みに構築されているので、その視点から楽しむのが正解なのだろう。
その意味では、「どこまで行くんだこの映画!?」と思わせた『クラウド・アトラス』とは似て非なる映画なのかも知れない。あと、ハリウッド映画では見られない唐突なエロ(アオリにあるような「官能の」という品の良さはあまりない)にフランス映画を感じた。