ジュピター

なんだかんだでウォシャウスキー兄弟(姉弟)の癖のあるヒネリ方はけっこう好物なので。というわけで、怪作『クラウド・アトラス』に続いてのヘンテコSF超大作『ジュピター』を観てきましたよ。
前作はどうみても『火の鳥』だったが、今回もまたしても日本のマンガアニメ、言ってしまうと『さよなら銀河鉄道999』にやたらと似ている*1
以下ネタバレ。


「命の素」として飼育されている未開人の生命によって支配層が不死を得る、という構図はまさしく『さよなら銀河鉄道999』における人間と機械化人の構造(彼らの出世作マトリックス』でもそのまんま踏襲されている)と同じ。前作『クラウド・アトラス』の未来パートとも通じる、この『エリジウム』と同じ(行き過ぎた資本主義の帰結としての)「ウルトラ格差」の設定がリアル世界との接点として用意されるものの、そこから始まるストーリーは便所掃除に明け暮れるヒロインがスターウォーズスペオペ世界のボディーガードと恋愛するシンデレラでした!という相変わらずのカオスっぷり。このへんのナチュラルな飛躍、いわば「マンガっぽさ」はやはり最近の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にも近く、ここ数年のトレンドなのかも。
重力靴による生身空中戦(これもトレンドだよね)など目新しいギミックもあるものの、クリーチャーもスペオペ風ビジュアルも艦隊による宇宙戦争ももはや手垢にまみれすぎ見飽きた映像のオンパレードなので、まぁ元々アイディアには優れるもののアクション編集には難のある姉弟だけに、純粋にSFアクション映画として見るなら凡作。そして舞台の取っ払ったストーリーは先ほど書いたように『シンデレラ』(もしくは『ボディガード』)なのでそれほど面白くもない。見所としては、劇中に唐突に挟まるスペオペ世界の官僚の硬直化っぷりを見せるシーンの演出があまりにも『未来世紀ブラジル』まんまで、トドメにその官僚はんこラッシュのラスボスが誰あろうテリー・ギリアム本人(!!)という超ゴージャスかつ意味なしオマージュなシーケンスくらいかも。『スピードレーサー』の度を越えたナンセンスからしても、もしかすると今の*2彼らはシリアスでキッチリした物語を作ることに飽きてしまい、ひたすらカオスでナンセンスなパロディ作品を作りたいんじゃあるまいか、という疑惑がふつふつと。いや、こういう「もう古くさくなったスペオペ」や「もう化石のようなメロドラマ」も、『ガーディアンズ・〜』やリメイク『シンデレラ』が登場する今のハリウッドらしさといえば言えるか。
それにしてもここんところの姉弟の脚本は、芯を作るのがラクだからか「運命」の色がやたら濃い。彼らの(アニメマンガを含めた)東洋びいきがその傾向に拍車をかけてもいるだろうが、映画の印象がワンパターンになってきている元凶にも思う。自分も気をつけよう。

*1:以前の『エリジウム』の感想(http://d.hatena.ne.jp/SiFi-TZK/20140721#p3)とまぁた同じことを書いていると思われるでしょうが本当にまたしても999なので我が目を疑った

*2:つまりマトリックス3部作以降の