TIME

「おそらく打つ者の血……血液を賭けろ……というのでしょう……!」
しばらく前に観たんだけど忘れる前に。冒頭のセリフはみんな大好き福本伸行『アカギ』の鷲巣麻雀開幕時のセリフだが、アカギの作中において「生命(血液)=カネ」という福本作品定番の論理が展開されるのと同様、本作では「寿命(時間)=カネ」という*1、ほとんど相似形とも言える価値変換が行われている。そう、実際、『TIME』というタイトルではあるが時間の話は演出面でしか活用されておらず、実質的に本作はカネの話であり、一連のブロムカンプ作品などと同様、現代の(アメリカ)資本主義へのアンチテーゼ的作品でもある。
思えば、美意識に裏打ちされたビジュアルと美男美女キャストで人気を博すアンドリュー・ニコルは、これまでも現代的…とはやや言いがたい普遍的なテーマを、虚構度の高い世界で語ることで作品に昇華してきた。本作も、星新一的な奇想SFストーリーでありつつも、クラシックカーが行き交うレトロフューチャーな世界と、若手ナンバーワンのイケメン俳優と妙にグラマラスな新人女優によって、視覚的に美しい寓話として演出されている。
そこここで引用される『ローマの休日』や『俺たちに明日はない』などのアメリカン・クラシックへの目配せなど、なるほど、老若男女にも知識層にも受けるサスペンス映画の作り方として、優等生的な回答を見せていただきました。

*1:ご丁寧にも作中に即死必至の高レートギャンブルまである