レミーのおいしいレストラン

ずいぶんリアルなドブネズミがフレンチを料理! という、ある意味CG映画で「やっちゃいけない」領域に確信的に踏み込んだブラッド・バード監督作。仲間のドブネズミの死体とか、『Mr.インクレディブル』に続き、ピクサー的良心作とは一味違うブラックな味わい。
なんだかんだいって展開は王道な他のピクサー作品と違い、本作はかなりストーリーが変わっている。レミーとリングイニ、二人いる主人公は、二人でやっと一人前*1にも関わらず、けっこうパートナーを蔑ろにしてるし、一癖ありすぎる脇役達は、敵とも味方ともつかない。伝えるメッセージはシンプルながら、単純な映画ではない。まるでミッキーのシンプルな絵柄と性格に対抗するかのように、現代のドブネズミ、レミーはリアルな見た目と同様、キャラクターにも記号的でない、多面性のあるキャラクター造詣を与えられ、安易な成長物語を拒否する峻厳さも持ち合わせている。でもだからこそ、このけっこうありえない展開の、必ずしも完全無欠じゃないハッピーエンドに、これほど心動かされるのだろう。
あんまり人気の出る映画じゃないと思うし、キャラ人気に至ってはPIXAR史上もっとも危険(ミッキーとネズミでかぶってるし)な賭けをした一本だが、個人的にはPIXARで1,2を争う傑作だと思う。次回も期待!

*1:レミーがリングイニを「操縦」する場面、さすが『アイアン・ジャイアント』の監督だけあって、まるでマジンガーのような巨大ロボっぷり!