シャッターアイランド

キッツイ映画だった。クリストファー・ノーランの『メメント』や『インセプション』にも似てる*1が、キツサは数段上。日本でいうなら、京極夏彦がいま『ドグラ・マグラ』を書いたらこんな感じ…って書くとネタバレかも*2
原作は全米ベストセラーらしいが、お話やキャラクターにスコセッシらしさは希薄で、原作の力による部分が大きいように感じた。スコセッシは今回、その魅力的な原作を職人的に映像化していく方針だったのか、最初っからロコツなCG合成でナニコレ?と思わせたり、原作のミスリードを逐一映像に「翻訳」していく引き出しの多さは、さすがのベテランの味を感じる。
ただ、「この映画には秘密があるので注意深くみてね」というアオリ文が上映前に出るのは完全に蛇足。それほどの秘密じゃない*3し、その秘密がいかに人間を押しつぶすか、に主眼が置かれたドラマだから、謎にばっか気をとられるとテーマにも気づかないまま映画が終わってしまう。あくまでイヤミス映画の佳作としてオススメ。

*1:インセプション』に至っては、主演が同じディカプリオで公開時期も近く、しかも亡き妻に執着し記憶がうにゃららする展開までが一緒すぎ。

*2:実際、かなりの部分で『ドグラ・マグラ』まんまだったりする。円環構造にして終わらせなかったあたりに現代っぽさを感じるくらい。

*3:カンの鋭い人なら設定を聞いただけでオチがわかると思う。