エンジェル・ウォーズ

残念、これは劇場ガラガラな理由がよくわかるハズレ映画。
画ヅラだけみて『スカイキャプテン』的なオタクテイスト溢れる痛快B級チャンネーアクションだと思っていたが、いきなりネタバレするけど、テーマといい構成といい、これ、『パンズ・ラビリンス』の方によほど近い。
しかも『パンズ〜』にあった「現実の現実らしさ」が本作にはなく、こんだけゲームみたいな映画*1のくせに、その対比となるハズの「現実」がやっぱりCGバリバリで現実味がなく、対比になっておらずテーマ的に破綻してる。

ビジュアルは『スカイキャプテン』ほどではないにしろ、それなりに楽しめた。ただこれも、せっかく「エンジェル」とかつけてる*2割に、どの女の子にも色気がなく、どう考えても『BLOOD』の小夜のコスプレにしか見えない主人公*3とか、「やっぱアメリカ人のザックには"萌え"とかわかんねぇんだなぁ…」と当たり前のことを思ったりした。たぶんこれ、ザックの頭ん中では『プロジェクトA子』的な映画なんだと思う。
あと、『ウォッチメン』でもかなり思ったが、ザック・スナイダーって実は「情感」ってのがまったく演出できない人なんではないか。役者はビジュアル優先で演技ができない(させない?)のかどうか、場の空気をただ音楽だけで表現しようとしてるシーンが多すぎる。映像作家としてそらダメだろ。このへん、我が国の「ビジュアルだけ」監督のホープ、キリキリの演出を彷彿させる。つうか「説明なしで延々イメージシーン」「音楽が鳴ってる間だけ」「それぞれ10分くらい」って考えると、これってクリップ集であって、最初っから「映画」を目指してないのかも。まだ劇映画を作るには早すぎたように思う。

もはや突っ込む気も起きない穴だらけの脚本は、テーマだけは「現実はフィクションと違って甘くねぇよ」みたいな大看板なので、その空回りっぷりも非常にかっこ悪い。つうかテーマを口に出して言ってしまうラストシーンとか、やっぱキリキリの映画なんじゃねぇのコレ。

以下、ゲーム業界方面の余談というか憶測。たしかザック・スナイダーがEAだったかと組んで新作ゲームを開発する、という話を以前耳にしたが、本作はそのネタのリサイクルっぽく見える。レベルデザインしかり、『デビルメイクライ』以来標準となった、銃+日本刀のアクションしかり。その上で、ゲームゲームした画面+「フィクションを否定する」テーマのセット、というパッケージングを見ると、ザックはTVゲームに対してなんか嫌みでも言いたいのか、とも思える。だとしたら、いま、ザックとEAとの関係はけっこう険悪なのかも。

本作のエンディングは誰得な院長先生リサイタル。残念ながらこれも、「あぁ、タランティーノとかバズ・ラーマンみたいにしたかったんね…」としか思わせないグダグダっぷりが泣ける。観客置いてけぼり。是非パヤオ先生にご鑑賞いただき、「セーラー服が機関銃撃って走り回ってる様なもの作ったら絶対ダメなんです。絶対ダメなんです*4」とコメントしていただきたい。

*1:レベルデザインが全般に横スクロールっぽいし、任務のサイズが映画としては小さく、FPSの単発ミッションっぽい

*2:原題だと「サッカーの映画だと思われちゃう」から変更、ってことなのだろうが、この邦題は『チャーリーズ・エンジェル』の「エンジェル」を狙ったんじゃないかと思う

*3:ちょっと残念なキャメロン・ディアス風に見えるところも『チャーリーズ・エンジェル

*4:http://www.style.fm/as/05_column/365/365_299.shtml