Batman: Arkham Asylum

マボロシの日本版をお借りしまして。
いやー、これもうコミックじゃないわ。なるほど、グラフィック・ノベルとはよくいったもの。濃厚な「絵」の力が、大したストーリーのないこの本のテーマを、読む者にまざまざと見せ付けてくれる。
バットマンアーカム=アリスの3重構造で綴られるこの地獄巡りは、夢から覚めるアリスを拒絶し、アーカム院長自ら収容された精神病院を、バットマンが収容される現実=ゴッサムと重ね合わせて幕を下ろす。ここでもやはり「あっち側」代表のジョーカーは、たまらなく楽しそうだ。“すべてが「あっち側」なら、おめーの帰るところはココしかねぇだろ?”とばかりに、そのホストっぷりは堂に入ってる。『ダークナイト』や「キリングジョーク」と同じく、ここでもジョーカーはバットマンを倒そうとしないあたりがニクい。
結局これ、キャラクターではなくて、本来の意味での「世界観」を描いたシリーズなのだと思う。作者やキャラクターが世界をどう認識し、どうあるために戦っているのか、という。ちょっとこれはゲームにはなんねーわな。