グリーン・ゾーン

これ、ものすごくよく出来たド硬派の戦争謀略アクションで、かつ「ボーン」シリーズのスタッフ、キャストが再結集してるからそういう文脈で見てしまうが、じつはサム・メンデスの『ジャーヘッド』と同様に(イギリス人監督が)「アメリカの戦争」を告発する、かなり政治的メッセージの強い映画だったりする。
実際アメリカでは(グリーングラスの前々作『ユナイテッド93』同様)すさまじい賛否両論を呼んだそうで、もちろんグリーングラスは『ブラディ・サンデー』の監督であるからして元々そういう作家ではあるんだが、おかげで北米における本作の記録的な興行的失敗*1以降、ハリウッドでの監督作が途切れているのが非常に残念。
もちろん、そんな結果があるとはいえ、本作特有の引力が薄れるわけでもない。
カッコいい人物のカッコいい台詞などにはまったく頓着せず、ホコリっぽい現場感覚のまま徹底して「叙事」に寄り続け、人物(と観客)を容赦なくエンドロールまで押し流す。
冒頭から複雑な情勢を手際よく整理してアクションとともに流れるように提示*2し、一時も立ち止まらないこのストロングスタイルの演出は前作『ボーン・アルティメイタム』にも増して極まっている。ハリウッドのアクションとサスペンスを一夜にして革新した男として、今後においてももっとも注目すべき監督の一人であることは間違いない。

…と、ダラダラ感想を書き連ねたが、それにしても本作には、企画の根本的な疑問としてどーしてもひとこと言いたいことがあるので書いてしまおう。
「"大量破壊兵器はない"って、みんな知ってたよね?」

*1:http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=greenzone.htm

*2:こないだの009に最も欠けている部分であろう。本作のクライマックス、大統領補佐官側が情報のタイムラグの不利を記者会見で一瞬にして覆すあたりとか、グイグイ密度を増していく脚本も実に巧み。ちなみに脚本はブライアン・ヘルゲランド