バリー・シール/アメリカをはめた男

たまたま時間が合ったという理由だけでほぼなんの事前情報も仕入れず鑑賞。こういう伝記映画にしては異常にテンポいいなーと思ったら監督が『ボーン・アイデンティティー』のダグ・リーマン(「ライマン」表記問題どうなった?)だった。
というわけで本作、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』に続くトム・クルーズダグ・リーマンのコンビ作なのだが、どうもダグ・リーマンは役者としてのトムクルの特徴を「なんも考えてなさそうなバカっぽい笑顔」と捉えているフシがある。パイロットの才能と人並みの欲と家族への愛情はあるがそれ以外はからっきしなある意味「普通の男」の異常な人生は、そのときどきで起きるドラマのすべてを「トム・クルーズのよくわかってない曖昧な笑顔」だけで無理やり先に進め、ある意味必然的にそれが破綻することで予定調和のように幕を閉じる。本作、副題が「アメリカをはめた男」なのだが、どちらかというと「アメリカをあんまり考えずにうっかりはめてしまって、おかげではめられてしまった男」というひどくカッコ悪い話でもあるのだった。その「カッコ悪い話」をある種のサクセスストーリー的に描く演出の妙は楽しく、これが実話!?と思えるほど杜撰な政府の対応などもカリカチュアが入っている*1のだろうが、笑顔の曖昧なバリー・シール氏がなにかの目的に邁進したわけでもないのと同様に、楽しく演出された本作がなにかテーマ的なものを語っていたか、というと若干の疑問符が付く。あくまで楽しいブラック・コメディとして観るのがお勧め。

*1:彼を捕えようとしたDEA、ATF、FBI、CIAが一堂に会するシーンはさすがに笑わされた。コントか!