戦争のはらわた

一見ホラー映画のようなタイトルだが、中身はペキンパー印の異色戦争アクションだった。一兵卒でしかないはずの主人公がハードボイルドヒーローで登場人物がみな彼を気にしているところや、彼を中心として舞台やテーマがどんどん変化して行くロードムービー的な構成など、のちに日本で作られたアニメ『装甲騎兵ボトムズ』も思わせる。ことによると元ネタの一つなのかもしれない。
バイオレンスの詩人サム・ペキンパーお得意のスローモーションで描かれる戦場は戦中派ならではの「意味の剥落した単なる暴力」をまざまざと観客に見せつける。最近作の『フューリー』や『ダンケルク』に見られる、幾重にも重ねられた意味を読み取らせる戦争映画とは一線を画した「肌感覚の戦場のリアル」を感じる。そして描かれるテーマはいまやすっかり見られなくなった「魂の自由」だ。ドイツもソビエトも関係ない、戦争も平和も好きにしろ、俺は俺の生きたいように生き、死ぬべき場所で死ぬのだ、という実にハードボイルドかつ個人主義的なテーマが、戦場でひとり哄笑するジェームズ・コバーンから伝わってくる。
要素が多く語りきれていない消化不良感は随所にあるものの、それも含めて戦争のままならなさを笑い飛ばす豪快さが本作を傑作たらしめている。観れ!