ダンケルク

前作インターステラーが合わなかったのでノーランはしばらくいいやぁ…とか思ってたが色々あって割引の日に鑑賞。
セリフをまったく使わない冒頭シーンなどはこれまで冗長といえるほどのセリフを積み重ねてきたノーランらしからぬ抑制ぶりで、「おっ、今回はちょっと違うな。新境地か?」と若干居住まいを正したのも事実。
ただ、その抑制もリアリズムも本当に冒頭シーンだけで、話が動き出すと全編カチカチドコドコと煽りに煽るBGMにひたすらうんざりさせられた。映像ではサスペンスを語りきれないと思ったのか、それともリアリズムの映像では観客がどういう感情を持っていいか迷ってしまうとでも思ったのか、いまや「現代の巨匠」であるらしいノーランはバリアフリーにもほどがある感情ガイドラインとしてのサウンドトラックを全編にべったりと貼り付けた。近年、この映画ほど「いいからそのクソやかましい音を止めて映画を観せろ!」と思った作品はない。それほど音に依存した、ある意味説明過多にすぎる演出は「映画に意味を乗せまくる」ノーラン演出の最新進化系なのだろう。
現物での撮影にこだわるノーラン監督らしく映像のリアルさは特筆ものだが、明らかに十字架を意識して撮られたスピットファイアなども含め、全体としては「リアルな作品」ではなく『インセプション』などと同じく「極度に人工的な作品」という印象を持った。その「人工的な感動」こそがフィクションの醍醐味だ、といえるほど人間ができてない自分みたいな人にはオススメしない。