キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

マーベルもアベンジャーズもそれほど興味ないんですが、前作がちょっと面白かったので。
前作、ザ・ファースト・アベンジャーは荒唐無稽な超人兵士計画のストーリーを、過去の戦争アクション映画――たとえば『ナバロンの要塞』とか『大脱走』といった名作に模した演出で描き、ドハデVFXエスカレート一辺倒になりがちなアメコミ映画にあって異色ともいえる一作に仕上がっていた。もちろんそれは空を飛べるわけでもない、ものすごい速度で動けるわけでもない、大破壊を可能にする攻撃力もその他特殊能力もない、というないないづくしなヒーローであるキャプテン・アメリカが主人公である、という切実な事情はあるにせよ、制作陣はそれを逆手にとり、乱立するヒーロー映画の中で独自の切り口を見せるシリーズとすることに成功したと思う。このへん、クレヨンしんちゃん的、と言えなくもない。
そして今回、戦争アクション映画に代わりキャプテンの舞台として選択されたのは、陰謀渦巻くスパイ映画の世界。007以前、非情で寡黙な男たちが暗躍する国際謀略映画のムードを出すにあたり、今作ではロバート・レッドフォードが起用されている。レッドフォードのスパイ映画というと、そのものズバリな『スパイ・ゲーム』が思い出されるが、あの作品や、ちょっと意識しているっぽいジェイソン・ボーンシリーズといった潜伏エージェントものと違い、どちらかというと映画全体の構造は同じくトニー・スコットが監督した『エネミー・オブ・アメリカ』に近い。そう、言ってしまえばこの作品、スパイ映画の皮をかぶりつつも、強大になりすぎ、敵なしになってしまったアベンジャーズ=S.H.I.E.L.D.≒アメリカの内ゲバ*1がテーマになっている。

ピーターのまわりの人はすぐ怪人化します。
スパイダーマン3 - 映画と本とゲームで日記

と以前書いたがマーベルユニバース特有の狭い狭い世界は今回またしても踏襲され、世界規模の危機を引き起こしたのは実質S.H.I.E.L.D.(の一部)、その尖兵たるウィンター・ソルジャーとキャップの戦いの趨勢もけっきょく昔の絆を思い出すかどうかにかかっている、という、え、なにがスパイ?なにが国際謀略だって?と思わず突っ込みたくなるようなこじんまりさ。
キャラクター商売としては正しいんだろうけど、こっからもう新しいものって出てこなさそうだなー、と思ってしまった。キャラが好きな人には、今後も彼らがどんな世界で活躍するのか想像することで楽しめるのかもしれない。ファンなら買い。

*1:主人公たちが強さのインフレを起こしてしまった作品が、宇宙人や未来人とともに救いを求める先として有名。ジャンプのマンガなどでもおなじみ。