Dr.パルナサスの鏡

ギリアム最新作でヒース・レジャーの遺作となった本作、今ごろ観たが実に面白かった!(いうまでもありませんが個人の感想です)
ひさびさのパイソン系歌唱の「警官の歌」がえらく気に入った*1のでiTuneかなんかで買ってしまいそう。ブラックジョークも満載、イメージの奔流も満載。とはいえこれ、アメリカ人は好きじゃないだろうなぁ(というかそもそもハリウッド資本じゃないし)、と思ったら米国興収800万ドル弱*2とな!? そこまで徹底的にコケるとは…。 内容的にも興行的にも『バロン』の再来といえそう。

パンズ・ラビリンス』の感想*3を書いたときに、ギリアム作品との比較でいろいろ書いたが、本作のテーマはまさに、その『パンズ・ラビリンス』に対するアンサーではないかとも思える。しかしそこはギリアム、想像力バンザイな能天気文部省(文科省)推薦映画にはやっぱりならない(ブラジルを撮った監督だしな)。現実に対してファンタジー=想像力がどう戦うか、ではなく、想像力がどう現実の人間を翻弄するか*4を、得意の映像マジックをひさびさにフルスロットルにして観客に畳み掛けてくる。
このまさにギリアム的としか言いようがないイメージのつるべ打ち*5と、『バロン』以上にガタガタな話の構成により、観客はもうワケもわからず彼らの「賭け」に参加するしかない。個人的には、ひさびさにギリアム印が強烈に刻印された映画が観られたことを喜びたい。映画館で観たかったなぁ。

「これってハッピーエンド?」
「それは保障できないな」

テリー・ギリアムは戦い続けている。その戦いの滑稽さも、それを「正義の戦い」と誤解することの危険さも、理解しつつも立ち向かわずには居られない。そして再び動きだす、「ドン・キホーテ」の映画化企画。まさに彼こそが、現実に立ち向かい続けるトリックスターなのだ。どんだけグダグダな出来だろうが、次回作ももちろん観るよ!

*1:暴力を振るいたきゃ警官になれ!という身も蓋もねぇリクルートソング

*2:http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=imaginariumofdoctorparnassus.htm

*3:http://d.hatena.ne.jp/SiFi-TZK/20100130#p1

*4:その意味では、ギリアムの前作『ローズ・イン・タイドランド』路線を忠実に引き継いでいる、とも言える

*5:のワリには、本作はけっこう低予算で作られている。イメージを0から作るギリアム映画は、特撮よりCGの恩恵をかなり受けやすいようだ