プロフェッショナル賛歌の終わり

ハリー・キャラハンが70年代のリアル・ヒーロー像を提示する一方で、007に始まる完全無欠のスーパーヒーローは、特に高度経済成長下の日本で大ヒットした。↑でも書いた、スタローン、シュワルツェネッガー演じるヒーロー達は、ジェームズ・ボンドの能力とハリー・キャラハンの魂とを併せ持つ、最強の個人主義者=ワンマン・アーミー*1にまでなった。
こうして、観客の規範となるヒーローは姿を消し、映画のヒーローはただもう観客のストレス発散の道具になった。『限りなく透明に近いブルー』や『なんとなく、クリスタル』がブームとなり、ホイチョイ・プロや秋元康が跋扈する日本ではプロフェッショナル賛歌が過去のものとなり、その復権には、バブルが崩壊する必要があった。
団塊世代を『恋空』みたいに号泣させたというNHK『プロジェクトX』(2000年スタート)は、「現代に失われたプロフェッショナルの誇り」を賞揚する番組だった。
その後継たる『プロフェッショナル・仕事の流儀』は、2000年代のプチバブルも崩壊し、さらなるどん底をさまよう日本人にプロフェッショナル賛歌を届けるはずが、ウサン臭い自称脳科学者のオッサンが本業じゃなくタレント業で稼いだあぶく銭を所得隠し&税金逃れをした挙げ句に番組打ち切り、なんて展開は、そーゆー「仕事のプロとして誇りを持て」という時代を徹底してコケにし、その再生を全力で阻止し封印に追い込んだ*2、あまりといえばあまりに象徴的な出来事だったと思う。

参考
茂木健一郎氏の申告漏れ:NHKに批判多数 「プロフェッショナル」打ち切り検討
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091209ddm041040116...

茂木健一郎さん3月で司会降板 NHK「仕事の流儀」
http://www.asahi.com/culture/update/1209/TKY200912090173....

斎藤環茂木健一郎の往復書簡「脳は心を記述できるのか」
http://sofusha.moe-nifty.com/series_02/

*1:初代ランボーの原作タイトルは『たった一人の軍隊』

*2:まるでデキの悪いRPGのラスボスみたいだ