アメリカン・ギャングスター

リドリー・スコットにしてはこの題材で「男の対決ドラマ」になって「ない」ところが新味だが、実話とはいえ、ちょっと詰め込み過ぎかも。黒人版『ゴッドファーザー』、ベトナム戦争時代の『トラフィック』、禁酒法時代ならぬ麻薬版『アンタッチャブル』でもあり。ラストは微妙に『Z』風味。
刑事が道徳と無縁な無頼の正義漢で、ヤクの売人が道徳を重んじる知的エリート、という対比が面白い。昔の話なのに、彼らが白人と黒人であることも含め、ちゃんと現代の「混沌としたアメリカ」を描いていると思う。スティーブ・ザイリアンらしくトリッキーなあーゆーラストのくせに、大してカタルシスもなくそのまま現代に放り出してしまうあたり、いまのリドリーのイギリス人らしい老獪さを感じなくもない。