ロン先生の虫眼鏡

俺内光瀬龍ブーム到来につき読了。なるほどー、石上三登志のエッセイで光瀬龍山田風太郎を日本的「死」志向の作家として並立して論じていたが、いまならわかる。つまり、医学を学び、戦中戦後を生きることで、人間を「そーゆーモノ」として扱うようになった山風と、動物学を学び、戦中戦後を生きることで、人間を「動物」として扱うようになった光瀬は、「人間」や「感情」を特別視せず、「でもモノじゃん」「だって動物だし」という徹底した相対化を果たした結果、もうひとつの軸の相対化――「歴史」を相対化する物語*1へと、創作の舵を切っていった、ということなのだろう。
光瀬的世界観の獲得法として読めて超面白い。この世界観=視点を、未来や宇宙に敷衍するとあーゆーSFになる、というのが実に一貫している。お勧め。
あ、グロテスクな描写(生きながら食われていく虫とか)が続出するので、虫とかグロイのとか苦手な人にはオヌヌメできません。

*1:片や、稗史を綴る忍法帖、片や歴史改変SF