428 封鎖された渋谷で

おまけシナリオまでクリア。面白かった。志の高さ、気宇壮大さっぷりは『街』に遥かに及ばないが、一般人にもわかるエンターテイメントとしてここまで練り上げた、そのチャレンジ精神とこのすばらしい完成度に頭が下がる。
ストーリー的には、「渋谷壊滅」のプロセスが緻密でなく、平凡でもあったのは残念。具体的には、加納シナリオと大沢シナリオ。まぁ、「お台場壊滅」のプロセスを濃密に描き出した『Op.ローズダスト』を読んだばっかだ、ってのもあるが、CIAとかモサドとかを安易に扱ってしまったせいもあり、本来A級になりえたストーリーがB級感覚まっしぐらになってしまったのは惜しい。リアリティを出せないなら、シリアスな話にそのネタを入れるべきじゃない、と思う。このちょっと古いバランス感覚、『ポリスノーツ』時代かと思ったよ。
おまけシナリオは、よく言われてるらしいがやっぱTYPE-MOONが苦痛。こちらはリアリティの欠片もない絵空事のつるべ打ち。共感覚ニュータイプじゃねぇって。なにより、出てくる人間のイデオロギーがあまりに独りよがりで、どいつもこいつも寡黙を装ってるくせに饒舌きわまりない、ってのが痛すぎ。シャムより御法川のほうがよっぽど行動で示してる。…まぁ、ラノベってのはどうもストーリーでも状況でもなく、印象とか感情とかイデオロギーばっかりを長々と書くものらしい、ってことはわかった。
もう一本の我孫子シナリオは始まって数秒ですべてのストーリーを理解したが、こちらはきっちりと「泣かせる話」になってると思う。泣かないけど。本編では、ぜったいカナンかアルファルドの血液型が、ってとこに持っていくと思ってた*1んだが…、まぁそうじゃなかったにしても、これで意外と社会派なところもあるこのシナリオに免じてチャラ。
ラストのエコ吉は予想外に楽しめた。リアリティレベルを本編に合わせる必要がない、というのが良かったのだろう。登場人物の性格もシンプルで、カナンのとは好対照。
あとあれだ、この作品最大の問題点は、「どんな状況でなにをするゲームかわからない」こと。『街』は本当にそーゆーゲームだったから仕方ないけど、こちらはきちんと収束する虚構度の高い話なんだから、もっとちゃんとした売り出し方をすれば、本来ゲームをやらない人にすら訴求できたのに。

*1:あんなに「日本では」数が少ない、って強調するもんだから。