ブリキの太鼓

こんな映画だったんだ!?
名作なのは間違いないが、かなりの毒入り。大人に失望し、子どものまま傍観者たることを自らに課した少年の物語と、ナチスに翻弄されるポーランド(とカシュバイ人)の物語が交錯する。結局、傍観者になり切れず、再び成長を始める主人公に、祖母はカシュバイ人の生きかたを諭す。やはり、人生は続くのだ。
ところでこの作品、ものすごく後世に影響を与えている気がする。特にクストリッツァ。あと『屋根の上のバイオリン弾き』とか。リアリズムではない、でもドロリとした「生活者のリアル」が、そしてそれらを飲み込む「イデオロギーの狂気」が、ここにもある。
無垢なる少年+超能力という設定は、キューブリックの『シャイニング』やクストリッツァの『ジプシーのとき』にもあったが、本作では主人公の「傍観者たる立場の強化」として使われており、「無垢なる少年」ではない、「不気味な傍観者」としての少年像を作り上げ、また子役の少年がそれに見事に応えて見せている。
しかしどんな濡れ場も感情の混じる余地なく描く*1あたり、つくづくヨーロッパ映画の味わいだなぁ…。

*1:濡れ場じゃないエロいシーンは結構あるのに。