ヴァーチャルハイドライドと内藤時浩

SSの『ヴァーチャルハイドライド』を発掘。はっきり言ってまったく遊べないゲームなのだが、ゲームデザイン的な見どころの多い、そうとう先進的なゲームだったことに今ごろ気づいた。当時は、似たようなゲームを考えていた『パンツァードラグーン』の完成度の高さばかりに目を奪われて、こっちには全然注目していなかったからなぁ。
『ヴァーチャルハイドライド』は既に現在流行の三人称AADVにかなり近く、ださい兄ちゃんの主人公も含めて国産RPGっぽくない。そう言えば、もともとの『ハイドライド』が『ドルアーガの塔』の影響そのままに、より米国産RPG的なシステムをシリーズに搭載していった経過を思い出させる。その『ハイドライド』シリーズを事実上駆逐してしまったのがファルコム版『ハイドライド』といえる『イース』シリーズだったのは皮肉だ。これは同じファルコムの『ザナドゥ』にも言え、『ハイドライドⅡ』と『ザナドゥ』はともにRPGの深みを追求した(その時点では両作とも特大ヒットを飛ばした)が、結局ハイドライドドラゴンスレイヤーもシリーズが断絶し、生き残ったのは「画像・音楽・ストーリー」を追求したイースシリーズだった。
話がそれた。
『ヴァーチャルハイドライド』もその名前にふさわしく、シリーズの遺伝子を色濃く受け継いでいる。自動生成マップは『ローグ』だし、『ダンジョンマスター』等(『ウルティマ アンダーワールド』も?)の影響もうかがえるし、当時のCRPGの最先端を目指していた節がある。また、世界の作り込みに対して、のちの環境SLG的AADV(シェンムーやらガンパレやらGTAやら)と同様のアプローチをしているのではないか、と思わせる。いまどきのMMORPGと同様に、時間や食事、重量の概念を取り入れた『ハイドライド3』でもその傾向は感じられたし、32ビット機の登場で内藤氏がその持てる力のすべてを出し切ろうとしたのではないか。
このゲーム、当時はこの流れに続くタイトルはなく、ワゴンセールの常連となってしまったが、AV面の完成度とボリュームを高めた続編が出ていれば、サターンの看板タイトルとなり得たのではないか。とは言っても、イース天外魔境→FF7に連なる国産ストーリーRPGの牙城を崩せたとは思わないが……少なくとも、(デザインを含めた全体のリアル指向も含め)北米でのサターン惨敗に歯止めをかける可能性はあったと思う。