ももへの手紙

ここ数年、やたら劇場で田舎アニメが量産されてるんですがこれっていつ頃の何に影響されて出てきた筍なんだろう。
で本作もその一本。お父さんが学者でお母さんが喘息持ちの少女が田舎に引っ越してくる、という、ずいぶん真正面からトトロにケンカ売りましたね、なシーンからスタートし、子供にだけ見える妖怪と交流したり病気のお母さんのために妖怪が疾走したりするクライマックスまで、基本的に換骨奪胎というかジャンルも同じで展開も同じなので換骨じゃなくてエピゴーネンにしか見えないのが残念。そしてこの120分もの長尺。トトロは90分にも満たない中篇なので、内容的にもそれほど差がない本作のダルさはこの長さが原因だと思う。
他の作品と比較するのは本来ルール違反だが、子供社会と大人社会それぞれにおける疎外の構図を見せ付けた『河童のクゥと夏休み』の鋭利な現代性や、同じく都会から母子が田舎にやって来るところから始まる『あまちゃん』における母親のドラマの昇華具合を見てしまうと、これだけの才能と労力と期間を投入*1して、この薄めたトトロのような映画を作る意味はいったい、とか思ってしまった*2。あと妙にバタバタしたCGの違和感や、環境音の不在による空気感の欠如など、アニメーターとしてはともかく、沖浦氏は監督としてはまだ未成熟な印象を持った。
西田敏行を筆頭とした妖怪三人組と、あと優香は良かった。

*1:おかげでアニメーションは本当にいい。逆に、アニメートだけが突出しているのでバランスの悪さも感じる

*2:超丁寧だがなんのために作ったがよくわからない、という意味ではアリエッティにも似ている