ウェディングベルを鳴らせ!

じつにクストリッツァくさいファンタジー。牧歌的な世界にヤクザがからむ結婚式騒動、という『黒猫・白猫』に酷似した展開に、ちょっとマンネリ感が…というかドライブ感に欠けるというか。舞台はクストリッツァが以前に買いとった村が舞台と思われるが、その資金捻出のためのプログラム・ピクチャー感もあり。
吊られるシーンの多さからしても、今回の主人公は聖人ポジションなのだろうが、そのせいかどうか走るシーンが足りないので、全体に『黒猫・白猫』ほどの疾走感(≒クストリッツァ作品における多幸感の構成要素)を本作は獲得できていない。テーマが前作『ライフ・イズ・ミラクル』ほど重くない分、もっと縦横に、奔放に村中を走り回って欲しかった。
クストリッツァシャガールの影響で動物と「飛ぶ花嫁」を自作にいつも登場させるが、「吊り」シーンやバルカンブラスバンド含め、いつものモチーフで手癖感あふれる本作のあとに、それらをほぼ封印し、強い主張を乗せた『マラドーナ』を撮ったと考えると、本作のウェルメイド感は意図的っぽい。 スピルバーグみたいな企画選定をしているんだろーか。
アメリカ、反グローバリゼーション的なネタは本作にもほんの少しだがその萌芽があり、それを完全に前景化した次作『マラドーナ』へと繋がっていく。クストリッツァのフィルモグラフィにおいて重要な作品ではないだろうが、実に興味深い一本。