K-20 怪人二十面相・伝

CASSHERN』の悪夢を嫌でも思い出す、コテコテCGスチームパンク世界で少年探偵団、というスレスレ企画。
…の割に、思ったよりマトモだった。
厨二まるだしセカイ系だった『CASSHERN』とは違い、ちゃんと大人が書いた脚本に見える。小林少年の単なる足手まといっぷり、BD(少年探偵団)バッジの不穏な使われ方などで見せる善悪の転倒や、女性の自立がテーマなのか、価値観をぶっ壊される超世間知らずなお嬢様=『ローマの休日』など、原作や名作への目配せも各所にあり、演出も、逃げる花嫁など、いい画はちょくちょくある。パルクールも既視感バリバリだが、金城武はがんばってる。
また、これはたぶん原作(『怪人二十面相・伝』のこと)の力だろうが、20面相の「悪のカリスマ」を減じさせずにヒーロー化する難題をこなしてるのも評価高い。
のだが。
中盤以降、頭を切り換えざるを得なかった。「A級を目指して届かなかった愛すべきB級」ではなく、「A級になったつもりの寒いC級」作品になってしまった。とにかく、要素をいろんなとこからパクリすぎたせいで、本作特有の要素、肝心要の20面相のキャラクター「悪なんだけど民衆の味方であるヒーロー」がものすごい勢いでブレまくり、結局ただ悪人をぶっ倒して終わってしまった。なんじゃこりゃ。ここまできてカリ城でもねーべよ。クラリスになり得ない松たか子とかどーでもいいです。『K-19』からいっこ増えただけで、ずいぶん脳天気な映画になったもんだ。

脚本を当初のコンセプト? に合わせるとしたら、もっと20面相の2面性を描くべきだろう。その上で、平吉*1がいかにして平吉なりの「2代目20面相」像を構築するか、という師弟対決のドラマにするべき。泥棒組織のおっさんとか要らん。そして、パルクールのシーンにスチームパンクらしい都市描写、ガジェットを生かしたアクションを大いに盛り込むべき。CGだからその上でアクションなんかできない、というのは制作側の都合だ。いま海外でFFがそれでぶっ叩かれまくってるように、内容に関係しないハッタリ映像はあっという間に観客にスルーされてしまう。
面白くなり得る要素、もともと原典では面白かった要素を数多く持ちながら、最終的にここにしか着地できないあたりが、ROBOT製日本娯楽映画の限界かもな、と思わされた一本。

*1:「遠藤平吉」というのは、原作の20面相の本名