グエムル 〜漢江の怪物〜

そして続けてコレ。こちらも、ハリウッドの『クローバーフィールド』に先駆けて「普通の日常にふらりと侵入する怪獣」を描いている。
面白いのは、研究所から排水→突然変異*1とか、黒幕は米軍だとか、この手の怪物パニック映画のベタベタな設定を別に捻りもせずベタに使っているにもかかわらず、主人公側を徹底して体制側から遠ざける(どころか敵対させる)ことで、「怪獣vs家族」という軸にすべてを集約できているのが上手い。

怪獣のルックがそっくりな『WXIII』は日本映画らしく怪獣自体にドラマがあったが、こちらの怪獣はただの怪獣で、その分、「家族」の描写に多くの尺を割いている。『殺人の追憶』でも思ったが、ポン・ジュノの演出はストーリーやセリフを超え、映像だけで観客の感情を振り回す。序盤の葬儀シーンとか、ただ泣いてるだけでぜんぜんセリフになってないあたりとか、これではまるで黒澤の『生きる』じゃないか! 韓国映画でコレをやるのか! と驚いた。
ちなみに『グエムル』は『殺人の追憶』に比べ音楽が弱いが、その『殺人の追憶』の音楽は岩代太郎。日本映画にも造詣が深い監督なのだ。

モンスターズ・インク』のオマージュみたいな殺菌部隊や、どうみてもキ○ガイ医者な米軍とか、主人公側も含めて過剰なほどカリカチュアされてるのにこれだけリアルな肌触りなのは、「偶然」を常に悪いほうにだけ働かせ、主人公側を徹底的に痛めつけてるからだろう。頼れるキャラをあっけなく退場させる*2とか、徹底してキャラクターに甘くない。そしてその果てにたどり着く、必然的に苦すぎるラスト。

2作続けて見たせいで、ポン・ジュノがどーゆー作家なのか、はちょっとわかってきた。ドギツイ主張やアザトイ演出もあるが、戦前戦後あたりの日本映画が持っていた骨太さと熱量を持つ、希有な監督だと思う。しかし日本でももうちょっと話題になってもいいと思うんだがなぁ…。

*1:ここでルーカスアーツの超傑作ADV『Day of the Tentacle』を思い出した。TAKE ON THE WORLD!!!

*2:『CUBE』なんかでも使われる黄金パターンではある