崖の上のポニョ

ジブリ美術館で見てきたので、初ポニョ。
聞きしに勝る、キチガイが作ったキチガイ映画。画面構成力、演出力は凄まじいものがある。
宮崎駿の前作『ハウルの動く城』の後半は明らかに構成が失速し、ストーリーが求心力を失っていた*1が、今回、故意か天然かはわからないが、確実にストーリーは放棄されている。それでいて、映像へのこだわりは更に先鋭化している。末期黒澤路線まっしぐら。『まあだだよ』まであと何作?
内容的には、自身が脚本した『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』の人魚姫風リメイク。パンコパは高畑勲のリアリズムが宮崎脚本の突飛さをねじ伏せていたが、ある意味、高畑演出に対する絶縁宣言である本作は、話も演出も突飛で、しかもどこにも着地しないまま終わる。ラストでグランマンマーレが「ほころびは閉じられました」と宣言するが、どう考えても世界は破綻したままだし、しかも、映像的にもドラマ的にも、別に盛り上がりをもたないままエンドマークを迎え、物語の終了を観客に伝えるのはその台詞のみ。なんじゃこりゃあ!?
トンネルとか停電とか水没した街(ここはホント雨ふりサーカスまんま)とか意味深なモチーフはちりばめられながら、別にそれらはテーマを補足するわけでもなく裏テーマを語るでもなく、ただイメージの羅列に過ぎない。これも末期黒澤的すぎる。
映像のクライマックスが中盤の「ワルキューレ→波の上をダッシュ」にあったことから、最終的に「波の動きがすごい映画」として記憶されそう。ある意味、『スチームボーイ』と同カテゴリの映画。

*1:http://d.hatena.ne.jp/SiFi-TZK/20060107#p1 いまの目で見ると、これは「老い」だった。