スパイキャッチャー

読了。ひたすらに「リアル」なスパイ組織の内幕。後半はMI5元長官ロジャー・ホリスのKGB内通疑惑がすべての活動に重苦しくのしかかり、しかもこの疑惑は晴れないまま終わるため、非常に読後感がよろしくない。ラスト近くでは、著者が自分の年金をフイにしたくないがために組織に波風を立てないようにするとか、そんなところまでも嫌になるほどリアル。「現実」とは「生活」の同義語だ、と再確認させられる。
クレイグ・トーマスの『闇の奥へ』の原著が書かれたのは1985年で、本書がアメリカで最初に出たのは1987年だから、『闇の奥へ』は『スパイキャッチャー』の内容を先取りしていたといえるかも。とはいえ、同じイギリスの話だし、スパイ小説の大家となったトーマスがそのネタ元のどこからか、ホリスの疑惑について噂レベルでも耳にしていた可能性はありそうだ。