スーパーマン・リターンズ

ブライアン・シンガー版スーパーマン
初っ端からスリットスキャン(風)効果のつるべ打ち、キャラクターの説明など一切なく、敵の人物造詣なんかも80年代丸出し、という、まさしく「当時のシリーズを知ってる人」専用仕様。
俺がいれば9.11も阻止できたんだがなぁ!と言わんばかりの旅客機救出の高揚感、何でもかんでも力押しで敵を圧倒する無敵っぷりを存分に見せる演出の一方で、スーパーマンの「かくも長き不在」をネチネチとあげつらう脚本のひねくれっぷりはまさしくシンガー。無敵のパワーはあれどもメンタルは小市民なクラーク・ケントが、「自分、不器用ですから…」とばかりに行動(カチコミ)でなんとか自己の存在を認めさせようとするしょっぱさは浪花節大好きな日本人でもどーだろう。この物語でスーパーマン最大の敵はどー見てもロイス・レーンで、そんなとこまでシンガー印。やっぱ女は嫌いなのか。
と、みせかけて。
実はテーマは父性だったりする。ロイス・レーンが怒っていたのは「父の不在」だったのだ。なんつーひねくれた脚本か。80年代っぽくけっこう隙だらけのお話だから、「あぁ、今回はそーゆー路線なのね」と思ったこちらを軽々と裏切りやがった。死せるマーロン・ブランドを復活させてまでジョー・エルとカル・エルの関係をクローズアップしてみせたりとか、観客は登場人物と違ってスーパーマンクラーク・ケントが不可分になっていることを逆手に取ってみたりとか、久々にシンガーが『ユージュアル・サスペクツ』の監督であることを思い知らされた。
ダークナイト』がテーマを前面に出した剛速球だとすると、こっちはのろいストレートのふりをしたフォークボールか。この路線のままなら、『マン・オブ・スティール』はあんま期待できそうにないなぁ。『バットマン:ビギンズ』が『ダークナイト』に化けたんだから予断はできないが。ていうか次回作の情報まだ?