バルバラ異界

まったくSF者でない義妹夫婦から借りた。星雲賞受賞も納得の傑作SF。少女マンガで夢テーマでSF、というとどーしても『ダークグリーン』を思い出す*1が、アレとはまた違った、身近な問題と星間戦争に、最新の科学トピックと壮大な時間軸までをからめ、それにどこまでもヒロイックにならない登場人物を、それぞれ年齢に応じたドラマで縦横に動かしてみせるこの豪腕は、まさに少女マンガ界の重鎮ならでは。カニバリズムの話が酵素を通じて記憶の連鎖の話に繋がり、それを持つ個人の夢が未来へ干渉するに及んでは、そのアクロバティックなSF的ビジョンの爆発するような膨張っぷりに眩暈さえ覚える。これぞセンス・オブ・ワンダー。そういえばイーガンぽくもある。
終わり方に少々不満が残るが、現代SFマンガの最高峰の一つ、と言えるんではないか。

*1:事実、夢と現実の重なり方や、キーとなる少年の立ち位置、終盤パラレルになる展開など、ものすごく似ている。雑誌も同じ。