山椒魚戦争

読了。ものすごく投げっぱなしな終わり方も含めて面白すぎ。
人畜無害な高等山椒魚と、徹底して資本の論理が優先される民主主義社会が出会ったとき、なぜか人類は破滅に向かって突き進む。これ、ウェルズにはあったがウィンダムには既にない、プロパーSFからは失われてしまった社会批評SFだった*1。この作品がまったく古びていない要因の一つは、まさにその社会システムが変わっていない(つまり、現代でも十分起き得る)ことにあり、その意味でも20世紀を代表する傑作、といえる。徹底してヘンテコな固有名詞のナンセンス、笑えない域まで確信犯的に踏み込む濃厚なブラックユーモア、なんだかヴォネガットや、筒井康隆っぽくもあり。
あと、「ハローハローハロー!こちら山椒魚総統です!」が、「こんにちはこんにちは!ぼくはまちちゃん!」に見えて困った。
この本(創元版)、抄訳だと知ったのが最大のショックかも。

*1:時代的にもまさにその中間