ロング・エンゲージメント

ジュネがハリウッド資本*1で撮った大作ミステリ映画。
時代的には第一次大戦と第二次大戦の間の話なのだが、あいかわらず画面に横溢するノスタルジックな空気のために、かえって時代を感じさせない不思議な映画になっている。
最後まで観ればラブストーリーとしてもとらえることができるが、その過程はまったくの本格探偵映画*2、しかも現場は人がバカスカ死んでゆく戦場とくれば、『アメリ』を想像してきた客を滅多打ちにしたことは想像に難くない。舞台となる塹壕と、そこでのミステリはキューブリックの『突撃』を思わせ、派手さもないままただただ死が積み重なる冷徹な戦場演出はスヴィエラークの『ダークブルー』にも通じる、ヨーロッパ人特有の死生観を感じさせる。
あと、ジョディ・フォスターが出ていて驚いた。別人だろうと思っていた*3ら、エンドロールでちゃんと出てきたよ! 脇役とは言え、ちっとも宣伝してないのはなぜ?
個人的な難点はフランス人の名前がなかなか覚えられないことと、『アメリ』にはまだあった現実離れしたビジュアルがなくなったこと。あとはお得意のカメラの垂直移動や、青を使い分けた映像など、ファン的にはほぼ完璧。本作で、キャロと袂を分かったジュネの方向性は見えてきたように思う。次は文芸大作か、なんかのリメイクあたりに乗り出すのではなかろうか。

*1:ちなみに『エイリアン4』のFOXではなく、今回出資したのはワーナー

*2:一歩間違えばまんまコスタ=ガブラスの『ミッシング』になりかねない、というサスペンスもあり

*3:吹き替えで観てたので