バリー・リンドン

さんざ世話になった100円レンタル屋が閉店するとゆー事で、キューブリックで観てない最後の一本を。
良く言われてるが、第一印象はとにかく「長い!」インターミッションが入る映画なんて『七人の侍』以来だよ……。時間だけなら『タイタニック』のが長い気がするが、あれはなんで休憩がないのだろう。
ともあれ本作、ただ長いだけじゃなく、それを冗長さと思わせてしまうのが最大の弱点か。ナレーションで展開を語ってしまっているので、わざわざ映像を観る気がしないシーンが多すぎる。映像は要りません、と観客に思わせてしまっては、映画としてまったく致命的だろう。
あと、バリー成り上がりの物語である前半がいつもの他人事なキューブリック節が貫かれているのに対し、悲劇となる後半は過剰に感情移入を促す演出に変わるのは、まぁそうでないと悲劇にならないからだろうが、一本の映画としてのまとまりを欠くと言わざるをえない。
いいところもある。
NASAからレンズを借り受けたという、蝋燭の炎のみで撮影された室内映像、完璧なまでに構図が計算され尽くした屋外映像とも、まるで1カット1カットが(誇張抜きで)絵画としか思えない極上の美しさだ。この作品で撮影のジョン・オルコットアカデミー賞始め世界中の撮影賞を総なめにしたが、いま現在でさえこれほど美しい映像が連続する映画にはお目にかかれない。カメラマン出身のキューブリックの美的感覚がもっとも発揮された作品と言える。
あとリドリー・スコットの『デュエリスト』がこの映画にかなり影響されているように思った。あれは決闘ばかりの映画だが、本作も決闘シーンが頻出し、それぞれがまた良く似ている。『デュエリスト』も絵画的な画作りが随所に見られたので、もともと似た傾向の映像作家なのだろう。そう考えると、最近のリドリー・スコットのフィルモグラフィがキューブリックに似ているのも、まったくの必然かもしれない。
世界3大「絵画映画」監督をあげるとしたら誰だろう? キューブリックテレンス・マリックは外せないが、あと一人はケン・ラッセルリドリー・スコットピーター・グリーナウェイか。なんかイギリス人ばっかだな。キューブリックもマリックもアメリカ人なのに。