亡国のイージス

やべぇ、ムチャクチャ面白い! 推理作家協会賞、冒険小説協会大賞、大藪春彦賞の3賞受賞は伊達じゃないということか。
登場人物同士の細やかな感情のふれあいから、もつれた国家的陰謀のスケールの大きさまで、ミクロからマクロを自在に行き来し、しかも海上自衛隊のディティールを積み重ねたリアリティまで備えた本作、ちょっと他に類を見ない。
海洋冒険、軍事、国際謀略、ミステリ、純文など、多彩なジャンルを内包する豊穣さに圧倒される一方、アメリカ式エンタメ小説にない深いテーマにも唸らされる。
乱歩賞直木賞のW受賞だった『テロリストのパラソル』にも似たテイストを感じるが、このスケールのでかさと、明確な主人公がいないことによるサスペンスの醸成が、本作をさらに魅力的にしているように思う。