コンテイジョン

ソダーバーグが引退前に監督した、現代版ウィルスパニック映画。『復活の日』から『アンドロメダ病原体』、『アウトブレイク』などの系譜だが、時代が下るに従って、映画で扱われるスケールはより小さくなる傾向があるような。これは、ITなどの影響で世界が小さくなったことと無関係ではないだろう。
オールスターキャストを縦横に動かすソダーバーグ演出は本作でも抜群の切れ味を発揮しており、特に序盤、バリバリと事態を整理し対処しまくる女性医師を「このキャラを中心に話が進むのかな?」と思わせておいてあっさりと退場させてしまうドライさとその後の展開に対する予測のできなさと、ラストにまったく無言のまま挿入されたDay1の種明かしの恐怖など、どこを切っても絶品の演出が堪能できる*1
本作のパニック映画としての「元凶」は二つ設定されており、一つは未知の致死性ウィルス、もう一つは「根拠のないウワサ」で、こちらにも相当の尺が割かれている。というか、歴代ウィルス・パニック映画に対する現代ならではの新解釈は、この二つをほぼ同等に扱っており、それがこの映画最大の新味といえるだろう。コミュニケーションできない悪=ウィルスを封印し、危機をからくも乗り切った人類も、コミュニケーションできる悪=どこにでもいる上杉隆を根絶することは出来ませんでした、というやはりソダーバーグの『トラフィック』にも似た、苦い苦い現代寓話。

*1:それだけに、ソダーバーグのあまりに早すぎる映画からの卒業が惜しまれるのだが