ゴールデン・フリース

読了。ユニクロの話ではなかった(あたりまえ)。
うーん、これって長篇ではないな。せいぜい中篇。












結局出てこない宇宙人、ほとんど意味ない幼年期の記憶に、まったく意味ないコピー人格とか、ガジェットとしてはまぁまぁ面白いけど、ぜんぜんストーリーの根幹に関わってこないから、単なる水増しに思える。ミステリとして肝心カナメのトリックも、いわば「死体の発見場所と腐乱度合いから死亡推定時刻を推定していたが、実は別の場所で殺されていたので見当違いでした」レベルで、なんかバカバカしい、とすら思ってしまった。『フレームシフト』でも思ったけど、なんでミステリの人が褒めちぎるSFってこうもガッカリさせられるのか。
『フレームシフト』もそうだったが、サドっ気のある作者のようで、無意味に不愉快な展開、キャラクターが多い。主人公も粗雑で、別にこれといった才気を発揮して事態を解決するわけじゃないし。だもんだから、敵となるコンピュータが単なる馬鹿野郎にしか見えない。思考を読んでくる相手との戦い、っつったらベスターの『分解された男』を思い出さずにはいられないが、その結末には大いに失望させられた。コンピュータによる殺人、という点で『2001年』との比較に関しても同様。
これが『アクロイド殺し』じゃなくて、『オリエント急行殺人事件』だったらもっと面白かったかもなぁ。互いに独立していたはずの知性コンピュータによる、オンライン共犯。その動機を考えただけで、相当なセンス・オブ・ワンダーのニオイがする。