これからは多人数ゲームの時代なのか

「みんなで笑顔!」に凱歌があがる 2008〜09年のゲームビジネスを読み解きます - 日経ビジネスonline デジタルエンタメ天気予報
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20081224/181231/

うーん…?
モンスターハンター』と『Wii Fit』の共通項として「みんなで笑顔!」を挙げるのはまだしも、それを「2008〜09年のゲームビジネスを読み解」く、っつー文脈で書かれると、ちょっと違和感あるなぁ。

 他の2008年のヒットソフト――「ポケットモンスター プラチナ」「マリオカートWii」「大乱闘スマッシュブラザーズX」――などに、すべて共通するポイントなんですね。どれもが、ゲームをしながら「周囲の人たちと会話する」「みんなで笑顔になっていく」ことを楽しむゲームになっている。

これらタイトルに『マリオパーティ』などを加えると更に明確になるが、ただ単に、出れば売れる定番シリーズの新作が集中したので、今年はそれらタイトルが軒並み「2008年のヒットソフト」に名を連ねた、という至極つまらない話にしか聞こえない。『Wii Fit』がそれらが持つ任天堂的カルチャーの昇華の産物である、というのなら納得するが、それとても、現在の任天堂――特にWii――の戦略が「家族の話題の中心となるハード」である、という事実を追認しただけ、にも見える。

宮本茂が、初代ゼルダで「謎解きをコミュニケーションで解決する」ことまでをゲームデザインに組み込んだ、と言っていたが、これは間違いなくFCでも大ヒットした『ドルアーガの塔』の遠藤雅伸の影響だろう。そしてそれは前作『ゼビウス』において、「謎」がゲーセンというコミュニティの中で積極的にやりとりされた、という経験から、遠藤が確信を持ってゲーム業界に投入した「爆弾*1」であった。
ドルアーガ以降」という言葉があるかどうかは寡聞にして知らないが、コミュニケーションを利用して「ゲームをプレイしていない間も楽しませる」という手法は、『ストリートファイターII』など、その後の多くのゲームに多大な影響を与えまくった。近年もっともその思想を色濃く感じたのは例の『ひぐらしのなく頃に』だが、シングルプレイゲームの非同時的な協力プレイ手段として、またゲームの口コミマーケティング手段として、この手法は広くゲーム業界に広まっている。オンラインゲームは一面で、この「ゲーム外のコミュニケーション」の内部化である、といえる。

つまり、この記事で「1人でじっくり遊ぶタイプのゲーム」とされたドラクエシリーズを含め、コミュニケーションデザインまで踏み込んだTVゲームは、過去もずっと、主流であり続けている。映像で圧倒するFFシリーズや、個人向けツールであるTouch!Generationsの諸々のほうが、歴史的には傍流であったのではないだろうか*2

*1:ちなみに遠藤自身この爆弾の被害者で、『ゼビウス』が謎まみれなのは『伝説巨神イデオン』の影響である

*2:これらが共に、往々にして「あれはゲームではない」と評されるのは興味深い