Op.ローズダスト

上巻の5分の4くらいまで。
やっぱ福井晴敏のディザスター描写は絶品だな! ほんと、モノをぶっ壊すことに関して、これほどカタルシスを感じさせてくれる作家も珍しい。まんまハリウッド調のカーチェイスシーンにしろ、舞台が良く見知った風景で、その崩壊と混乱が時系列まで含めて鮮やかな手際で描き出されると、もはやその力技に屈服せざるを得ない。
が。
ちょっといただけない部分もある。特に、政治家や官僚があまりにステロタイプな「保身のみに走る小者」すぎる。せっかく主人公や相棒などのいつもの「アニメのキャラ」の陰影が深くなり、徐々に違和感が薄れてきているのに、バックボーンが薄っぺらくなって行くのは明らかにマイナスだろう。
あと、敵の動機がどんどんひねくれ過ぎていってて、そろそろどーでも良くなってしまいそう。個人的には『終戦のローレライ』の「国家としての切腹」くらいがギリギリ。いまんとこ、本作もギリギリはギリギリだが、もうアウトの側に思える。
公安警察に関係する部分が『日本の公安警察』 (著:青木理)まんまだってのも、アレ読んだ身にはちと興ざめかも。参考文献にあがってるとは思うけど。