タイアップの歌謡史

読了。これも面白かった。
リゾート旅行や化粧品、映画にテレビに文化イベント。これら「あってもなくても構わないもの」を売り込むためのツールとして、歌謡曲は使われてきた、という切り口がまず目新しい。
そして、やっぱり「あってもなくても構わないもの」である歌謡曲が、ときにそれらを利用し、ときには利用され、多くの場合それらと手を組んで、市場と文化をともに成長させてきた、との歴史観に貫かれる一冊。「原盤権 」に注目するだけで、これだけ多くのことがわかるのか、というのも目からウロコ。
そして電通などの広告代理店が「ブームをどう“仕掛け”ているのか」が、まるで手品の種明かしのように手際よく解体され、もはや不可分となった日本の音楽産業と広告産業との関係が、巨大な存在感とともに浮かび上がってくる。
本書とはあまり関係ないが、「なぜ歌は広告と相性がいいのか?」に対する答えが、いま読んでる『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』に書いてある。曰く、「(脳生理学的に)音情報は内容を理解されるより早く認知される」。簡単にいうとつまり、理屈で否定される前に、感情で肯定されてしまえば、その人間の行動を縛ることができる。なんと、「マクロス」シリーズのテーマであり実践とは、実に、コレだったのだ!!!*1
いかにして、生活に役立たないものを消費者に買わせるか? という命題に悩むすべての人に。

*1:と、本気で思ってる人がもしいたら是非お話させていただきたく