月に繭 地には果実

いわゆる福井版∀ガンダム福井晴敏といえばガノタ(富野オタ?)で有名だが、これ読むと、やっぱり作家としての方向性はぜんぜん違うな。
福井晴敏はもともと書き分けられる人間の種類が多くない*1ので、イノセントな少年であるロランはともかく*2、エキセントリックな富野キャラたち(特に女性)は自家薬籠中にできていないし、ディティールをリアリズムでがんばればがんばるほど、「ガンダム」とか、いかにも富野アニメっぽいネーミングセンスによる各種固有名詞がチグハグ感を主張し始める。
あと、もともといい意味でバカっぽい福井キャラと違い、頭でっかちな富野キャラって、ある種異次元な世界なら違和感なく見れなくもないけど、ガチッとした社会構造に放り込まれると単なる異常なコドモの集まりになってしまうのが痛い。まぁ、それを思わせない世界作りこそが富野アニメの真骨頂なのかも。ガンダム00ってどうなんだろ。
それはともかく、ビーム兵器の恐怖を皮膚感覚で描写するあたりは鳥肌もの。ここまでねちっこく書かれると、SF的感動すら覚える。間違いなく、単なるノベライズを超越した、アニメとは別個の作品になっている。
イスラエル成立と中東戦争を髣髴させる基本設定から、どんな結論を引き出すのか? これ読み終わったら、アニメ版もちょっと観てみたい気もする。

*1:新作ごとに着実に増えてはいるが

*2:このロランとキースが、のちの征人と清永の原型かも