暗殺者

読了。クライマックスに誰も彼もを集結させ、集約させるのが、ややアザトイ感じはしたが盛り上りまくり。たしかに並みの本5,6本分のプロットが突っ込まれてる。なんつー贅沢な本だ。あと「!」を多用する文体は、抑制の効いた英国冒険小説とは違って結構新鮮かも。ラスト1/5あたりの文体含めたテンションの高さは異常。
終わり方は若干物足りないが、まぁ続編もあるし、そもそも原題は『The Bourne Identity』なんだからこれはこれでいいのだろう。
スパイ小説と言えなくもないが、ほとんど時代と関係ないあたりも特筆もの。CIAが仮想的を「ソビエト」と名指ししているシーンで、突然「あぁ、コレってその時代に書かれたものなのか」と気付かされたくらい。
映画は発端の方とボーンの正体あたりこそ忠実だが、あとはかなりのベツモノ。トレッドストーンの作戦自体が違うし、マリーの役割も全然違うし、なにより、肝心なラスボスがカットされてる。あとはやっぱりカットされたビリエール将軍。この将軍が出てくることでサスペンスやリアリティなど色々失われた部分もあるが、やはり人間ドラマとしての深みは増したと思う。
完全にスパイ映画として贅肉を殺ぎ落としまくった続編映画では、もうこういうキャラの出番すらありえないとは思うが。