鬼平犯科帳

一巻。TVのイメージで見るとちょっと引くね、こりゃ。
いわゆる捕物帳は、たしか殺人などの反社会的要素を含む現代劇=推理小説とかが大本営だかGHQだかの統制で描けなかった頃に、探偵趣味を満たす作品を世に出すために時代劇の体裁をとって戦後大ブームを起こした、と記憶している。横溝正史の人形佐七とか。
鬼平」に関しては、事件の不可解性や謎解きプロセスの面白さといった、ミステリ的興味はオミットされ、事件解決のプロセス、特に組織的行動に主眼が置かれている。その意味で、マクベインなどの「警察小説」の時代劇版、といえる。
まぁはっきり言えば毎度毎度似たよーなお話なのだが、マクベイン同様レギュラーキャラが多く、それぞれの人生が事件の合間合間に描かれるから、一種の生活小説としても読め、そこが長年の人気の一因だとも思える。で、登場人物が血縁ばかりで、どっちかっつーとホームドラマ的側面の高い「剣客」に比べ、「鬼平」の世界は他人同士が関わり合う「組織」…しかも30人くらいのグループの話だから、世の中間管理職の共感を鬼平のみが受けるのもむべなるかな。
そう考えると、池波正太郎のもう1つの人気シリーズ「梅安」は今の時代にはあんま受けないかも。アウトローだから。