果しなき流れの果に

読了。8章あたりから広げまくった風呂敷を畳みに入って俄然面白くなり、9章で出てくる余りに壮大なビジョンに圧倒され、枯淡なエピローグ(その1)に涙する。
ヤバかった。これ20代に読んでたら人生変えられてたかも知れん。さすがにこの年ではそこまで行かないが、本当に久しぶりに、初めて味わうタイプのセンス・オブ・ワンダーにクラクラさせられた。純粋なSF的感動の極致。けっこう伏線の張り方とかは乱暴で、回収の仕方にしても当初の思惑と違ったのでは、と思うところもあり、最後の方でやたら駆け足になるのも構成の点で気になるが、それも含めた異常なライブ(行き当たりばったり)感、ドライブ(つめ込みすぎ)感も、いかにもワイドスクリーン・バロックらしい。
ちょっと面白かったのが、後年の『日本沈没』のネタが、さらりと1エピソードとして使われているところ。小松左京の頭には常に日本人がテーマとしてあるらしい。他にも、第一世代あたりは(主に社会科学的な)テーマが先にあり、それを究極まで突き詰める手段としてのSFを志向していた節がある。英米SFでは「ギャラクシー」誌登場以前はウェルズくらいしかこのタイプはいなかった筈で、日本SFが成立と同時にいきなり成熟していた理由がちょっとわかった。
それにしても!
昔の日本SFは面白いなー、もっともっと読まんと。筒井康隆半村良はある程度分かってるからまぁいいとして、他の第一世代から山田正紀あたりまでがすっぽり抜けてるから、まだまだ傑作は埋もれてそうだ。ワクワク。